コミックス「アオアシ ジュニア版」の巻末では、カラー8ページで、元Jリーガーで日本代表を長く務めた中村憲剛さんを先生に招いて、「アオアシ」の魅力をサッカー技術とともにたっぷり解説していただいています!
今回「サンデーうぇぶり」でも、WEB版だけの「指導者目線」の内容を新たに加えて、特別公開いたします!!
初めまして、中村憲剛です。
ここでは、アオアシの魅力を選手目線だけではなく、僕なりの指導者目線も交えながら読者の皆さんに伝えていきたいと思います。
現役Jリーガーの僕がアオアシにハマったわけ
まずは僕自身がアオアシにハマったきっかけから話していきます。
まず第1話からインパクトがありました。
中学生のアシトが自分のプレーを福田監督に説明した時、実は22人全員のポジションを把握していたというくだりがあります。
つまり、アシトにそういう能力がもともと備わっていたという設定で、まずそこに「おおっ!」と思いました(笑)。そんな中学生いるのかと(笑)。
ここからアシトはいろんなことを覚えていくんだろうなと思いましたし、これは興味深いぞと。
こういう切り口のサッカー漫画はなかったと思いますし、当時現役選手だった自分も、そこから一気にハマっていきました。
鳥の視線でピッチを見る、ということ…
現役時代の僕は、「鳥のようにピッチを見てプレーしているみたいですね」とまわりから言われることがありました。
これはバードビュー、いわゆる”俯瞰の目”と言われているもので、試合中にピッチの上から味方と敵がどこにいるのかを把握しているかのようにプレーしていることから、そう言われていたんです。
だから、アオアシのあのシーンは自分がサッカーをやるイメージ像を漫画にしてもらった感覚です(笑)。
あれは痺れましたね。ただ僕の感覚だと、あんな上空よりも試合中継カメラぐらいの高さの映像かな。
第1巻の第1話で俯瞰の目がアシトの武器であることも触れますよね。
でも、そこからしばらくあの武器は出なくなるじゃないですか。
エスペリオンのレベルだと、ボールが止まらないので慌ててしまうし、パスが繋がらないので、俯瞰の目を出したくても出せるような状態ではなかったから。
瞬間、瞬間で壁にぶつかりながら、少しずつできるようになって、周りとのイメージの共有ができて繋がりが出てきて、みんなとやっとうまくプレーできるようになる。
やっぱり一本通行じゃ俯瞰の目は出ないんです。
伏線を張りながら、みんなと繋がることでイメージが湧き、それまで出せなかった俯瞰の目がそこでエスペリオンのレベルの中で、バンと出た時のあの瞬間は最高でしたね(笑)。
自分がピッチに立っていた時も、こうなったらいいなと思ったイメージがうまくいった時というのは、敵も味方もコントロールしてしまうようなものです。
その場を全て制圧した感覚になります。
あれはサッカー選手としてのすべてを肯定してもらえる瞬間で、思ったことをみんながやってくれた時のアシトのゾクゾクした気持ちはわかります。
僕のサッカー人生でも、あの感覚になれた試合はそう多くないですけど。
あの年代でそれを持ってるなんて、アシト、いいなぁって(笑)。
1巻でちゃんと伏線張っているのがすごいと思いますし、そのために、あの試験はあったんだと感動しましたね。
アオアシは監督目線で見ても面白い!
現在の僕自身のことを言えば、2020年限りで選手を引退して2年目になります。
指導者としては、まだまだ駆け出しです。
当時は選手の目線でアオアシを読んでいましたが、今は指導者の目線でもこの漫画を見られるようになってきました。
例えば、福田監督の指導法。
福田監督は指導するときに、答えを言わないですよね。
第1話だと、「来たボールを、コントロールオリエンタードで円に入れろ」としか言わない。
それでどうなるかじゃなくて、まずやらせる。
選手は答えが欲しいからとりあえずやる。
すると、いつの間にか前のめりになっているし、やっていると、ちゃんとたどり着ける。
答えを先に伝えると、到達は早いかもしれないけど、そこから先に広がっていかないかもしれない。
そういう意味では、福田監督はアシトの知らない世界を見せてくれる存在でもあると思います。
何より、アシトが壁にぶつかった時に言ってくれることがヒントになって、それで突き抜けていく…… あれは指導者としても、たまらないんだろうなと思います。
僕は福田さんのエッセンスがある監督になりたい(笑)。
福田監督は、ちょっとオシムさん(イビチャ・オシム監督)と被って見えるときもあります。
エスペリオンユースがオシム式のトレーニングをやっていましたが、上手くなるメニューもリアルですよね。
ただ名前を呼びながら、ボール2個でやるのは多分、Jリーガーもできないかもしれません(笑)。
ずっとやっていたらできるようになるかもしれないですけど、あれをすぐにできたら、恐ろしいです。
福田監督が素晴らしいと思うのは、一人一人をちゃんと見ているところです。
阿久津のようなタイプでもしっかりと間に入って接してますし、分け隔てなくみんな見ているから、何か難しいことやろうとしても、選手はやろうとする。
見えなかった世界を福田監督が見せてくれるし、選手はそれを知りたいからどんどんやる。
ちゃんと到達地点があって、それを段階を刻みながらやらせている…指導者の教科書ですよ(笑)。
逆に栗林晴久には、福田監督もあえてそんなに教えていないんだろうなと思ってます。
あそこまで才能があると、むしろ指導者は教えることを我慢して、環境を与えるだけでいいですから。
自分の枠組みにはめるよりも『勝手にどうぞ』の方が早く突き抜けていくんだと思います。
でもユースに戻すタイミングは、トップチームのガルージャ監督としっかり駆け引きする。
さらにアシトに栗林が出会えるタイミングにする…素晴らしい指導者ですね。
アオアシはサッカーが上手くなるためのヒントがたくさん詰まっていると思ってます。
大事なのは、アオアシを読んだ後に自分はどうするのか。
もちろん漫画なので、「いやー、面白かったー」と思ってもらうのが大事なんですけど(笑)、じゃあ、そこで自分はどうするのか。それを考えるきっかけにもなる漫画だと思っています。
アオアシを読んで受けた刺激を、ぜひ自分のサッカーの取り組みにも生かして欲しいですね。
コミックス「アオアシ ジュニア版」では、「選手目線」でのアオアシの見所とサッカー技術を解説していただいています!
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●取材・文/いしかわごう
●イラスト/小林有吾
●写真提供/ケンプランニング